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「Rによる地震時最大加速度の推定」と「Rによる地震時最大速度と計測震度の推定」のための補助ページ
R, RStudio, Quarto and STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)
本ページは Rによる地震時最大加速度の推定、Rによる地震時最大速度と計測震度の推定のための補助ページです。
最大加速度については地聲上,最大速度については表層地盤の影響を取り除いた硬質地盤上のものに対してそれぞれ距離減衰式を求めることにした。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=1
各種観測機関によって観測された強震記録を収集した。そのうち,最大加速度は21地震の1137記録,最大速度は21地震の543記録を整理した。これらは地盤上ないし低層建物の1階にある観測点から得られたものである。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=2
結局,最大加速度については856記録,最大速度については394記録を用いた。なお,最大振幅値は水平2成分のうち大きい方の値を用いた。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=3
断層最短距離の場合は(1)式で,等価震源距離の場合は(2)式で示す回帰モデルを用いた。 \[\begin{eqnarray}\mathrm{log}A&=&b-\mathrm{log}(X+c)-kX\tag{1}\\\mathrm{log}A&=&b-\mathrm{log}X_{eq}-kX_{eq}\tag{2}\end{eqnarray}\] ただし,\(A\)は地震動の最大振幅値,\(X\)は断層最短距離[km],\(X_{eq}\)は等価震源距離[km]を示す。 右辺第1項の回帰係数bは距離減衰曲線の絶対値を支配する項で,右辺第2項は幾何減衰を表す項である。右辺第3項は粘性減衰を表す項であり,この係数kの値は,既往の研究では,最大加速度で0.003前後,最大速度で0.002前後を取る場合が多い。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=3
断層最短距離の場合は,(1)式で示すように,回帰モデルに係数\(c\)を導入して,距離が小さいところで地震動の振幅値が飽和するようにした。\(c\)は(3)式で示される。\(c_1\), \(c_2\)は回帰係数である。 \[c=c_110^{c_2\cdot M_W}\tag{3}\]
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=3
最大加速度に対する地盤特性の影響については,最近の研究では岩盤に対する地盤の増幅率が平均で1.4倍程度であることが指摘されている。本研究は,これらの結果に従って,最大加速度距離減衰式を求めるときに,岩盤上の最大加速度観測値を1.4倍大きくして,地盤上の最大加速度値に変換した。本研究で用いる最大加速度の大部分は地盤上の観測点で得られたものであるため,この変換値と地盤上で観測された最大加速度を用いて地盤上での最大加速度の距離減衰式を求めることにした。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=3
Midorikawa et al.(1994)は千葉県東方沖地震の際に得られた多数の地震記録を用いて地震動に対する地盤特性の影響を検討し,その結果,最大速度に対する地盤の影響を評価する方法として,地盤増幅率[R]と地盤の30mまでの平均S波速度[AVS30]との関係式(4)を提案している。 \[\mathrm{log}R=1.83-0.66\mathrm{log}AVS_{30}\tag{4}\] 本研究では,観測された最大速度値[Vorg]を(4)(5)式で硬質地盤上の最大速度値[Vcor]に変換する。ここでいう硬質地盤は(5)式で示す増幅率が1となるような地盤で, 平均S波速度で600m/sのものである。このように地盤の影響を補正した硬質地盤上の最大速度について距離減衰式を求める。 \[V_{cor}=V_{org}/R\tag{5}\]
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=3
出所論文中では硬質地盤を上記(5)式の\(R\)が1となるような地盤と定義しています。よって、硬質地盤の平均S波速度は、
と約600m/sになります。
最大加速度については(中略)これらの値から(3)式で示すモデルより回帰分析を行い,図中の実線と(6)式で示す係数\(c\)とマグニチュード[\(M_W\)]との関係が得られた。
\[c=0.0055\cdot 10^{0.50M_W}\tag6\] 出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=4
最大速度については(中略)これらのデータを用いて,最大加速度の場合と同様な方法で回帰分析し,図中の実線と(7)式で示す係数\(c\)とマグニチュード[\(M_W\)]との関係が得られた。 \[c=0.0028\cdot 10^{0.50M_W}\tag7\]
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=4
既往の研究で,地震動を影響する要因として震源深さ,断層タイプなどが挙げられていることから,係数\(b\)を求めるため,これらの要素を取り入れた(8)式で示す回帰モデルを用いた。 \[b=aM_W+hD+\sum d_iS_i+e+\epsilon\tag8\] 式中,\(D\)は震源深さ,\(S\)は断層タイプ,\(e\)は定数項,\(\epsilon\)は標準偏差を示す。\(a,h,d\)は回帰係数を表す。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=5
距離が十分に離れていれば距離の定義によらず両者の結果は一致すべきであるので,例えば\(M_W\)の係数\(a\)が両者の場合1で一致することが望まレい。そこで,\(M_W\)の係数\(a\)が距離の定義によらず一致することを拘束条件としf与えた。また,近年の研究では,震源近傍での最大加速度は\(M_W\)によらずほぼ一定との指摘が多いことから,断層近傍でのマグニチュード依存性が小さいことも拘束条件として与えた。
出所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/64/523/64_KJ00004087596/_pdf/-char/ja#page=5
地盤のS波速度構造がわかれば地盤による地震波の増幅特性を解析的に評価できるが,増幅特性を評価する簡便な物理量として,地表からある深さまでの地盤の平均S波速度が有効であることが指摘されている。図-4は,1987年千葉県東方沖地震の強振記録から抽出された最大速度振幅に対する地盤の増幅度[ARV]と深さ30mまでの地盤の平均S波速度[AVS]との関係を示している。この平均S波速度とは深さ30mから地表までのS波の伝播時間を30mで除したものである。ここで,第三紀ないしそれ以前の地盤の丘陵地(AVSが600m/s程度)を基準の地盤とし,この地盤での増幅度を1としている。この関係式は(1)式で表現できる。ただし,AVSの単位はm/sで,式の最後の値は標準偏差を示している. \[\mathrm{log\,ARV=1.83-0.66log\,AVS\pm0.16\quad(100<AVS<1500)}\tag{1}\] 従って,国土数値情報に含まれる情報から任意の地点の地盤の平均S波速度が推定できれば,この式により地盤の平均S波速度を地盤の増幅度に変換できる。そして,増幅度分布を既往の距離減衰式により得られた基準地盤での地震動強さに乗じることで,最大速度振幅で評価した震度分布が得られる.
出所:http://news-sv.aij.or.jp/kouzou/s4/past/archive_pdf/22_1994.pdf#page=36
強震動予測をする場合には、地盤の影響を大きく受けないところまでの地震動を、地震のマグニチュードと震源距離で設定し、次に地盤による増幅特性を別の方法で評価するという方法を用います。 「地盤の影響を大きく受けないところ」を地下のある深さのところに面的に想定しますが、その面を「地震基盤」と呼びます。震源からの距離がそれほど違わなければ、地震基盤に入射する波はどこでもほぼ同じと考えられます。具体的には、地表から深さ十数kmまでの地殻のS波速度は平均で毎秒3~3.5kmとほぼ一定であるため、地殻最上部のS波速度毎秒3kmの地層を地震基盤と呼びます。
出所:https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_seismic_bedrock_and_engineering_bedrock/
しかし、実際には、地下深部の地震基盤での観測記録や地震基盤までの深さの地下構造に関する情報はそれほど多くありません。そのため、構造物の設計を行うときには、地震基盤という概念に基づいて地震動特性を評価することが実際には困難となります。そこで、構造物を設計する際には、地震基盤より浅いS波速度毎秒300~700mの地層を「工学的基盤」とするという考え方がなされています。
出所:https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_seismic_bedrock_and_engineering_bedrock/
Vs30とは、表層地盤(地表からおよそ30m程度の深さまで)の平均S波速度を指す専門用語であり、軟弱地盤ほど値が小さくなり、地震の揺れに対する予測係数であることが知られています。
出所:https://www.gsi.go.jp/chirijoho/chirijoho41046.html
震度階級1 | 計測震度1 | 人の体感.行動2 |
---|---|---|
0 | 0.5未満 | 人は揺れを感じないが、地震計には記録される。 |
1 | 0.5以上1.5未満 | 屋内で静かにしている人の中には、揺れをわずかに感じる人がいる。 |
2 | 1.5以上2.5未満 | 屋内で静かにしている人の大半が、揺れを感じる。眠っている人の中には、目を覚ます人もいる。 |
3 | 2.5以上3.5未満 | 屋内にいる人のほとんどが、揺れを感じる。歩いている人の中には、揺れを感じる人もいる。眠っている人の大半が、目を覚ます。 |
4 | 3.5以上4.5未満 | ほとんどの人が驚く。歩いている人のほとんどが、揺れを感じる。眠っている人のほとんどが、目を覚ます。 |
5弱 | 4.5以上5.0未満 | 大半の人が、恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる。 |
5強 | 5.0以上5.5未満 | 大半の人が、物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。 |
6弱 | 5.5以上6.0未満 | 立っていることが困難になる。 |
6強 | 6.0以上6.5未満 | 立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。 |
7 | 6.5以上未満 | 立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。 |
(1) https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/calc_sindo.html | ||
(2) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html |
最終更新
R、Quarto、Package
著者
Footnotes
断層最短距離の場合と等価震源距離の場合。↩︎